クロモジ栽培 新たな特産へ
飯南町 島根県中山間地域研究センター
つま楊枝やお茶の原料として利用されている「クロモジ」。薬用としての効能に注目が集まり需要は増加傾向だが、そのほとんどが森林に自生していることから収穫に労力を要し、安定供給が難しかった。島根県中山間地域研究センターでは、他に先駆けてクロモジ栽培による耕作放棄地の解消と新たな特産品の開発を目指し、県内農家の協力のもと試験栽培を本格化させている。
クロモジはクスノキ科の低木性落葉広葉樹で、播種した年に30㌢程度に育った苗木を畑に植える。2年経過すると背丈を超える高さまで成長する。枝を折るとかんきつ系のさわやかな香りがするのが特徴で、古くから茶やつまようじなどの加工品に利用されてきた。最近ではクロモジの抽出成分に抗ウイルス作用があるという研究結果が発表され、クロモジエキス入りのど飴がインフルエンザ対策商品として雑誌などで取り上げられるなど話題を呼んでいる。しかし、森林に自生するクロモジは、収穫に大変な労力を要し、出荷量も不安定なことから安定供給が課題だ。
以前からクロモジの苗木生産技術などの研究を行ってきた島根県中山間地域研究センターでは、2018年度からクロモジ原料の生産を目的とした試験栽培をスタート。複数農家の協力を得て、現在、県内16カ所の試験地で栽培指導に力を入れている。試験栽培に協力する土池茂樹さん(53)、博子さん(52)夫妻は「クロモジの香りに引かれて栽培を始めました。獣や虫も寄りつかないため、除草以外管理の手間がほとんどかからないのが魅力」と話す。
土池さん夫妻は9月初旬に収穫。刈り取った枝葉は3週間ほど自然乾燥させたのち、葉と枝に分けた。葉は粉末状にして菓子に加えたり、枝を防虫用品として商品化するなど幅広い用途への活用に期待を膨らませる。
同センターの大場寛文専門研究員(41)は「試験用苗木は栽培適地や収益性の判断のため、耕作放棄地や休耕地へ植えてもらっています。試験栽培で得られた知見を生産拡大に繋げていきたい」と話す。県内では菓子や焼酎などにもクロモジの活用が進む。今後、栽培技術を確立させて島根県の特産品に向けて、挑戦は始まったばかりだ。