地域の農産物で地域の課題解決
大田市 「企業組合井田屋」
大田市温泉津町の「企業組合井田屋」はこれまで以上に住民が暮らしやすい、持続可能な地域づくりを目指し、2022年1月に設立した。鳶川秀信(とび かわ ひで のぶ)代表理事(72)は「法人化した後が大切。本来の目的を忘れずこれからが勝負」と話す。
井田地区では、少子高齢化で人口が減少する中、就業の場の少なさや、交通の不便さ、草刈りの担い手不足などの問題が以前より深刻化している。任意団体の井田自治会ではこのような問題を解決するため、地域おこしとしてさまざまなことに取り組んできたが、より活動の幅を広げようと有志で法人を立ち上げた。
現在は、焼肉のたれの製造・販売や、竹細工の販売、軽作業、地域内での移動を容易にする定額タクシー事業などに取り組む。
焼肉のたれは和牛婦人会で提供して好評だったものを、法人化に合わせてアレンジを加えた。原材料にはニンニク、ショウガ、みそなど地域の農産物をふんだんに使い、試行錯誤を重ね、プレーン、辛口、鬼辛の3種類の味の商品化に成功した。
江津市や大田市の道の駅で販売し、販路拡大を目指す。大田市にある「道の駅ごいせ仁摩」の桂智洋(かつら とも ひろ)駅長は「焼肉のたれは好評で、さまざまな年齢層が手に取っている。井田屋ブランドとしてほかの商品も楽しみにしている」と新製品に期待を寄せる。
「今後も、より多くのアイディアを出しあえる環境を大切にし、志を共にする仲間を増やしたい。また、地域内のリーダーとして、中心となって活動する若者の育成に力を注ぎたい」と鳶川代表。今後の取り組みとして、地域の農産物を使用した新製品の開発や、乾燥野菜の販売、地域食堂の運営を引き継ぐ計画がある。いずれは、農産物の加工販売のための作業場も建築し、働ける場も増やす考えだ。
鳶川代表は「現在の収支を考えても、実現には時間がかかる。焦らず、末永い取り組みとして、今の子どもたちが将来も過ごしやすく、暮らしたいと思う地域づくりを目指していきたい」と話す。