次代につなぐ農業を
出雲市 衣笠 久志 さん
「日本では国産の野菜が少なく、働き手は高齢者が目立つ。誰かが続けなければ、農業はいずれなくなってしまう。自分がやるしかない」と話すのは、出雲市神西沖町で「きぬちゃん農園」を営む衣笠久志さん(39)。
24才の時、中国やインドなどへの旅行で、海外の貧しい状況を再認識した。生きていくためには食べることが不可欠だと、食料の大切さを感じ始めたという。
以前は異業種で働いていたが、知り合いの農家の下で2年間働く機会があり、そこでの経験をきっかけに、就農を決めた。
その後島根県立農林大学校へ入学し、有機農業を学んだ。卒業後、就農2年目には経費削減のためハウスを1人で建設。この経験は、就農してから、1番苦労したことだという。
苦労して建てたハウスで、最初に栽培を始めた作物がキュウリだ。「キュウリは種を撒いてから、収穫するまでしっかり管理しないと、品質が落ちたり、枯れたりしてしまうため手間がかかる。農業を勉強するには適した作物で、世話した分だけ収穫量として表れるのでやりがいがある」
現在はハウス(7棟、25㌃)、露地(85㌃)でキュウリのほかにダイコン、ネギ、スイートコーンなどを栽培する。
就農してからしばらくは毎日1人での作業に追われ、自由な時間がなかなかとれない日々が続いた。そんなときに勧められたのが収入保険だ。農業収入に対する唯一の保険であったたため、すぐに加入を決めた。
農業収入の不安がなくなり、従業員を雇う決心がついた。趣味のバイクを再開することができ、日々の仕事により一層力が入るようになったという。
農林大学校で同じ時期に農業を学び、今も親交のある森脇健斗さん(31)は、「向上心が強く、より良いものをひたむきに求めている。方針は違うが、同じ農業者として見習うところばかり」と評価する。
衣笠さんは「従業員には、自分がいないときでも迷わず作業できるような伝え方を心がけている。失敗を恐れず、先々に伝えていける農業者になりたい」と力強く話す。