柿農家が、株式会社を設立
ー出雲市野石谷町 小松 正嗣さんー
出雲市平田地区は、県内の西条柿生産量の約7割を生産する一大生産地。その平田地区で、柿の生産と加工を行う「柿壺株式会社」を設立したのは、小松正嗣さん(36歳)。高齢化などで耕作ができなくなった園地の積極的な受け入れと、独自ルートによる販路開拓など、収益確保と会社の安定経営を目指して、小松さんの新たな挑戦は始まった。
兵庫県出身の小松さんは、学生時代に島根で過ごしたことが縁で、県内の柿農家で経験を積んだのち2014年に新規就農した。「一から始めても、周りと勝負ができない」と耕作放棄した園地を積極的に取り込み、7.3ha(うち4haは新植)で西条柿、富有柿などを栽培している。
栽培規模を広げるなかで、従業員の雇用や取引先への信用付与に法人化が必要だと感じ、今年の1月に会社を設立。
会社の事務は妻の牧子さん(40)が担当し、従業員はアルバイトを入れて4名を雇用する。
柿壺の1日は、朝8時のミーティングから始まる。毎朝、当日の作業内容を確認し、それぞれが持ち場に付く。
作業は手作業が中心だ。「除草剤は使いません。草刈りは大変ですが、消費者の安心につながります」と小松さんは手間を惜しまない。肥料も堆肥を10a当たり2t、毎年人力で散布する。
昨年の出荷量は45㌧で、共販だけでなく、自らが開拓した卸会社や地元スーパーに出荷している。今年は栽培面積が70a増えたことから、出荷量で約50tを見込む。
小松さんを研修時代に指導したJAしまね出雲地区本部平田柿部会の奥秀男部会長は「年ごとの生育状況に上手く対応していくことが大切です。今の勢いを会社経営に活かしてほしい」と話す。
JAしまね出雲地区本部東部営農センター常松靖行係長は「高齢化で生産者が減少していますが、若手が園地を継承することで廃園対策になります。若い力で産地を盛り上げてほしい」と期待をかける。
柿部会の会員数は94名で、小松さんが農業を始めた6年前と比べ20名以上が離農している現状がある。その中で、会社設立という新たな手法で過去から受け継がれた資産をどう生かしていくか。小松さんの手腕に注目が集まる。