認証が追い風 ブドウ栽培で地域を担う存在に
- 大田市鳥井町 原田武敏さん-
家族みんなで作ったおいしいブドウを食べてほしい」と話すのは、島根県大田市の原田武敏さん(37)。「安全で美味(おい)しい島根の県産認証制度(愛称・美味しまね認証)」を県内のブドウ農家として初めて取得。デラウェアを主軸として、認証を得た優れた品質を武器に、生産規模と販売の拡大を目指している。
原田さんは、現在8つの連棟ハウスでデラウェア40a、シャインマスカット18a、巨峰15aを中心に83aでブドウを栽培。作業は、母の啓子さん(67)と妻の久美子さん(36)の3人で行う。
「今までの栽培方法と、ブドウ栽培の先進技術を組み合わせて、より高品質なブドウを栽培したい」と、県の指導員の協力を得て、土壌改良やせん定技術などの先進技術を学ぶ一方で、美味しまね認証取得に必要な作業管理の見直しを行った。
認証基準には、安全性、品質、地域独自性の3つの基準があり、認証にはGAP手法を用いた農業生産工程管理などが義務付けられ、原田さんも作業の衛生面や農薬の保存など管理を徹底している。
施肥は、点滴チューブを使った養液土耕栽培で行い、定期的に行う土壌分析の結果をもとに養液の成分量を調整し、生育状況に応じた施肥を行っている。結果として、化学肥料や農薬の使用量の削減に繋がり、「粒張りが良くなり、出荷時の品質規格でも赤秀率の上昇が見込める」と原田さんは話す。
また、原田さんは食育活動も熱心だ。地元の小学生を対象に、せん定や収穫体験などを開催し、子供たちに少しでも市内の特産物に興味を持ってもらうため地域貢献にも力を入れている。
大田市ぶどう生産組合の有吉誠志組合長(59)は「まじめで周囲の意見にも熱心に耳を傾けるので、関係機関との関係もいい。将来の生産組合を担う存在になってほしい」と評価する。
JAしまね石見銀山地区本部生産販売課の市川雄規さんは「就農し、地元に定住する人たちを増やす取り組みを計画していて、原田さんはその中心となる人です」と期待をかける。
島根県育成の新品種「神紅(しんく)」を5aで栽培するなど、新たなチャレンジも行っている。今年は、約20aのハウスを増棟予定だ。認証制度に裏打ちされた高品質なブドウ栽培に、原田さんは家族と共に汗を流す。