「泊まれる博物館」から「暮らせる博物館」へ

奥出雲町  「奥出雲百姓塾」

外観はそのままに、宿泊できるよう改修した奥出雲百姓塾

「泊まれる博物館」として知られる奥出雲町の奥出雲多根自然博物館(多根幹雄理事長=62歳)では、昨年9月に古民家を改修した体験交流施設「奥出雲百姓塾」を開設した。同館では、奥出雲の魅力を県内外の多くの人に感じてもらうことで、地域の活性化と定住につながればと意気込む。

同館は全国で唯一客室を備えた「泊まれる博物館」として親しまれている。恐竜の化石などを多数展示し、地球や生命の歴史を学べるほか、宿泊者限定のナイトミュージアムが好評。年間延べ約2万5千人が訪れている。

昨年9月には、築80年以上の古民家を3年かけて改修し、伝統的な農業と暮らしを学び、体験できる交流施設として奥出雲百姓塾を開設した。「博物館だけを体験するのではなく、日本農業遺産に認定された農村文化が残る同町の魅力にも触れて欲しい」と多根理事長。

百姓塾は木造平屋で6部屋あり、最大12人が宿泊できる。屋根裏は昔の農具を展示するほか、元は牛小屋だった隣接のスペースは、床をフローリングにして農産加工体験ができるように改修。施設の延べ面積は約350㎡にもなる。

キッチンスペースも設けた。食材を持ち込んで自由に飲食ができ、広い庭ではバーベキューが楽しめる。要望があれば調理機材や食材なども用意し、博物館のレストランの利用も可能。オープンから1月末現在で約130人が利用した。

宇田川和義館長(74)は「1棟貸しなので、家族や仲間で安心して利用できる。ここでしかできない生活、ここでしかできない非日常を体験して欲しい」と話す。

宿泊者は、昔ながらの手作業による田植えや稲刈りなどの農作業体験や地元の行事に、滞在時期に合わせて参加できる。また、博物館のナイトミュージアムが無料になるほか、佐白温泉「長者の湯」入浴券付き(入湯税は別)の特典がつく。いずれも徒歩数分の圏内だ。

宇田川館長は「奥出雲町は神話に語られ、古くから自然とともに農業を営んできた知恵と暮らしが受け継がれている。百姓塾を機に、『泊まれる博物館』から、地域に根ざした『暮らせる博物館』を目指して、周辺の環境整備を進めていく。ぜひお越しいただき、奥出雲の風土を体感してほしい」と将来を描く。

「宿泊は家族連れが多く、県外からの利用も多い」と宇田川館長

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