農福連携の6次産業
雲南市 あおぞら福祉会「尺の内農園」
「自然と共生し、障がい者が活躍できる地域社会をつくりたい」と話すのは、雲南市のあおぞら福祉会の森山史朗統括部長(48)。農業と福祉をつなぐ農福連携の事業所として利用者10人とスタッフ5人が、ワイン用ブドウや茶、カボチャなどを栽培する。生産から加工、販売の6次産業化を一年を通して実践。その取り組みが注目されている。
あおぞら福祉会は、保育園やグループホーム、生活介護事業所など幅広く経営する社会福祉法人。障がい者が自立して暮らしてほしいという思いから、2018年12月に就労継続支援B型事業所「尺の内農園」を立ち上げた。
まず始めたのがワイン用ブドウ「シャルドネ」の栽培。25㌃の土地の整備から始まり、ビニールハウスを建て、苗を植えた。
農業の経験はなく、右も左も分からない中、同市の奥出雲葡萄園の指導を受け、予定していたよりも2年早く、昨年は760㌔を収穫することができた。
奥出雲葡萄園の安部紀夫ワイナリー長は「尺の内農園のみなさんがワイン用のブドウ栽培に一から取り組みたいということで協力をさせてもらっています。良いブドウが収穫できて、個性的なおいしいワインができることを期待しています」と話す。
今年の収穫は9月ごろから始まり、約2㌧を見込む。収穫したブドウは半分を奥出雲葡萄園に買い取ってもらい、残りを委託醸造することでオリジナルワインとして数量限定販売する。
同農園の取り組みでもうひとつのメインが茶の生産、加工だ。耕作放棄された茶畑30㌃の活用の活用が里山再生の一助となっている。秋から冬にかけて収穫し、焙煎したほうじ茶を「三年晩茶」として販売する。和紅茶も扱い、いずれも焙煎は市内の間伐材で作った薪を使用し、深くまろやかな味が好評。地元の道の駅やスーパー、オンラインショップなどで販売する。
さらに今年はJAしまねとカボチャの契約栽培を開始。休耕地18㌃で約1800本の苗を植え付けた。
森山統括部長は「われわれの活動はまだ始まったばかり。利用者のスキルが上がれば面積も増やすことができ、所得向上につながる。さまざまな業種と連携して地域の活性化にも貢献したい」と意欲的だ。