サル被害防止 地域単位で対策推進を
獣害の減少に向けて研究を進める大田市の西日本農業研究センター大田研究拠点の鳥獣害対策技術グループでは、サル被害防止の取り組みを加速させるため地域単位での対策を推進している。過疎化が加速する中山間地域で、被害に対する共通認識を住民間でどう高めていけばいいのか試行錯誤が続く。
対策を習慣づける
鳥獣害対策技術グループの上田弘則研究員(51)は「被害防止には、追い払いや誘引物となる放任果樹を伐採するなど、サルを集落から遠ざけることが基本です」と話す。農作物被害の直接的な防止策となるだけでなく、サルに農地への侵入は危険だと学習させる効果も期待できるという。 同グループでは理想的な防護について、①放任果樹など農作物以外の誘引を除去すること、②動物の行動特性に基づいた防護柵の設置、③定期的な点検と観察を推奨する。
上田研究員は、防護柵の見回り記録を作成していた柿農家を例に「被害対策を農作業のひとつとして習慣づけることが重要」と話す。
一方、対応の仕方で問題もある。電気柵の支柱を掴んで侵入するサルもいるため、支柱に電線を巻きつけることが必要となるが、出来ている農地は少ないのが現状。また、電気柵も夜間通電の設定になっていて、日中活動するサルには効果がないなど農家によって対応も様々であることから、適切な設置方法など住民間の意識の統一が急務となっている。
加害個体にしない
「無差別に個体数を減らすのではなく、まず加害個体を減らすという認識を持つことです。既存の捕獲と駆除も必要ですが、サルを加害個体にしないことが先決です」と話すのは石川圭介研究員(45)。地域全体でサルを寄せ付けない取り組みを実行することで、エサも得られず侵入もできないとサルが認識し寄り付かなくなり、侵入の連鎖を断ち切ることに繋がっていく。
同市の的一司さん(60)は、サルの農作物への被害を減らすため、地域と連携して対策を続けている。的さんは「捕獲しても被害は止まらないのが現状です。捕獲の要望は増えていますが、コストなど負担も軽くない」と話し、自分たちで捕獲を続けていくことに限界を感じ、防護柵などを使用した住民主体の対策を呼びかける。
同グループの堂山宗一郎研究員(36)は「昔は、農地を人家で囲う集落づくりをするなどマンパワーと共通意識がありました。過疎化の進む中山間地域でそれらをどのように補っていくのかが今後の課題」と、人口減少に対応する効果的な対策を模索している。