歯応えとコクの新品種 エノキタケ「黄雲」

島根県中山間地域研究センター

島根県が新たに開発したエノキタケのオリジナル品種「黄雲(こううん)」。

生産の安定性や収益性などを目標に開発した黄雲は、県内各地に自生する野生のエノキタケを数パターンに分けて組み合わせ、通常の白色ではなく野生のエノキタケに見られる淡い黄色が特徴だ。

試験期間を経た2018年12月から本格的に出荷が始まり、今後、県を代表するブランドとなるか期待が高まる。

大きさや色が、野生のエノキタケの特徴を表す。

島根県の栽培キノコの産出額は約17億円で、そのうち県外への出荷が10億円と中山間地域の雇用と定住を支える重要な産業となっている。栽培の主流はシイタケで約8割を占めるが、菌床栽培の広がりからシイタケのほかにマイタケなどの出荷も増加してきている。

中山間地域研究センターでは、県内産キノコの更なる知名度アップと生産拡大を目指したオリジナル品種の開発を2012年からスタートさせ、実証栽培期間を含めると生産開始までに6年間を費やした。

黄雲の名称は、見た目の「黄色」と地域名の「出雲」の組み合わせで「幸運」の音に当てはめて公募で決定した。色以外にも、今までの品種と比べて傘が大きく成長することや弾力のある歯ごたえとコクのある味わいなどが特徴となる。

元となる野生のエノキタケは、県内7か所の山林で採取したものを使用し色や形など特性ごとに組み合わせて研究を続けた。開発を担当した同センターの冨川康之科長(52)は「開発する際に重視したのは柄の色です。野生のエノキタケは柄が真っ黒になるのが特徴ですが、外見上の欠点となるのでなるべく柄が黒くならないよう組み合わせを工夫しました」と話す。

現在、奥出雲町と邑南町で生産されているが、昨年12月から生産と販売を行う奥出雲町の有限会社奥出雲椎茸の鹿野努所長(37)は「エノキタケ本来の風味を生かしたまま、安定した収量を上げることに苦労しました」と菌床栽培での管理方法について試行錯誤を重ねたと話す。

栽培時期は品種特性から冬季に限定され、栽培ができるのは3月末までとなる。

今後は、産地拡大に向けた栽培農家への普及対策と産地横断的なキノコブランドへ成長させるための産地表示や商品説明を統一など、県と農家が一体となってPR活動を行っていく予定だ。

「お吸い物や天ぷらなどにもぴったりです」と鹿野所長

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