液肥自動制御のトロ箱栽培
大田市 殿山 正記さん
メロン栽培の盛んな大田市温泉津町井田地区にIターンして6年目を迎える殿山正記さん(51)、裕子さん(49)夫妻は、ハウス5棟(約20㌃)で春と秋にメロン栽培、冬はパクチーなどの葉物野菜の栽培に励む。
殿山さんは、脱サラを考えていたとき島根県の就農相談バスツアーに参加。その中で、同市で普及を図っていたトロ箱を活用したメロンの養液栽培を知り、栽培方法がマニュアル化されていることや既存のハウスを借り受けることで高額な初期投資が抑えられることから就農を決意した。
神奈川県から移住後は、借り受けたハウスで1年6カ月間研修を受け、2014年に新規就農を実現した。「農作業は2人とも不慣れで、特に収穫時期の繁忙期は休む暇もなく苦労しました」と正記さんは当時を振り返る。
夫妻が取り組むトロ箱栽培は、島根県農業技術センターが開発した簡易型養液栽培システム(通称・トロ箱栽培)で、ヤシ殻等の培養土をいれたトロ箱に苗を定植し、液肥を供給する自動制御システムにより、生育に応じて水分や養分を管理する。
ハウスを貸し出し栽培指導に係わった同市の藤田文男さん(72)は「地元にうまく溶け込み、住民ともコミュニケーションを良くとり気遣いもいい」と2人の人柄に感心する。裕子さんは「自分で判断して、自由に働けることが魅力です」と農業の楽しさを話す。
今後、冬場の作物として、養液栽培によるパクチー、トレビス、ビーツなどの葉物野菜の栽培に力を入れ、県内の飲食店へ直接卸すことで、周年を通じた収入の確保と多品目による経営規模拡大を目指している。