養蜂50年、技術を後世に

松江市  廣江浩さん

島根県の養蜂は、ミツバチへの農薬による影響のほか、蜜源となる

「一枠に約5000匹もいますよ」と廣江さん

作物が少なく、経営としては厳しい状況といわれる。そうした中、松江市大庭町の廣江浩さん(85)は、長年培った技術を伝え後世に残そうと、一線を退いた現在も日々奮闘する。

約50年前、バスやタクシーの運転手をしていた際、親戚のミツバチの管理を手伝い、20箱を引き取ったことがきっかけで養蜂を始めた。

ミツバチは高温が苦手のため、夏は避暑地として島根半島へ、秋はソバの花咲く八束町へ、季節ごと山野の花を求め巣箱を移動させる。

「自然環境の変化だけではなく、高濃度の農薬はミツバチにとっては致命的。ミツバチは身近な危険に晒されても避けるしかない」

働きバチの一生はわずか1カ月で、外で働けるのは10日間。1匹分で蜜になるのは、耳かき棒1杯程度しかない。一方、女王蜂の寿命は5年といわれる中、1年で更新するのが廣江さん流。

「女王を育てる王台という巣房を選定するのが難しいが、いい女王蜂が育ち、ミツバチが働くと元気がわく。季節に合わせて巣の管理とミツバチの数を適度に保ち、分蜂するのを防ぐのが腕の見せどころ」

廣江さんが採蜜した「百花蜜」は濃厚でまろやかさが特徴。たとえ同じ花であっても採蜜する土地・天候の違いで味わいに微妙に違いが出る。特に春の花で採蜜されたものは格別だという。

廣江さんは島根県の養蜂組合副組合長や松江養蜂組合長を務め、2年前に退いた。養蜂技術は容易に伝授されないことが多い中、弟子はもとより相談に訪れる人が多く、その数は50人を超える。また、東京や神奈川の個人からも頼まれ、現在30群を管理。そうした長年にわたる養蜂産業発展の貢献が評価され、今春に日本養蜂協会から表彰を受けた。

一人前になるには10年かかるといわれる中、「最後の弟子になるかも」と話す廣江さんを「師匠」と呼ぶのは松江市の亀本奈美さん(52)。

「もともとは廣江さんの生蜂蜜を買っていましたが、養蜂に興味を持ち、自宅から通いながら技術を学んでいます。指導も大変熱心にしていただいています」と話す。

廣江さんは「この地域に合わせた養蜂の知識・技術をこれからも惜しみなく伝えたい」と笑顔で話す。

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