現場重視の経営戦略

安来市  農事組合法人「のきの郷」

「次世代が育たなければ農業のみならず地域活性はありえない」と話す山本組合長(右)と構成員の内田卓実さん(53)

設立から6年目を迎えた安来市の農事組合法人「のきの郷」(山本耕一代表理事組合長=69歳)では、次世代へバトンタッチするための作業の省力化をはじめ、収益性を上げる計画が進んでいる。高収益作物への取り組みや若い世代の雇用のための土台作り、役員ではなく現場の職員を主体とした経営戦略で、農業による地域活性化と法人の収益の両立を目指す。

若い世代を積極的に活用

同法人では、高齢化に伴う後継者問題や、若い世代が経営に携わりにくいことで起こる経営の停滞に対応するため、役員定数を削減し、若い職員を各部門の責任者に置いて組織の若返りを図った。若い世代に経営への自覚を持たせるため、作業だけではなく、どうすれば収益が上がるかなど、考える力を育てている。

収益性を上げるため、水稲苗を自家産に変えるなど製造原価を下げる試みや、作業効率を上げる設備投資も同時に進めた。

若い世代の雇用の一環として、農業大学校の実習生を積極的に受け入れている。打ち合わせや朝礼などで、実習生にも意見を求め発言力を養うなど、次世代育成に余念がない。

人材派遣事業にも参画

U・Iターン者などの人材を小規模事業者が共同で雇用して派遣する「安来市特定地域づくり事業協同組合」にも参加し、安来市への定住促進にも一役買っている。2021年4月から始動する同協同組合の組合長には同法人の山本組合長が就任する予定だ。

安来市地域振興課の藤原崇史係長は「若いU・Iターン者の雇用や定住の受け皿となる事業。農業法人が今後継続するには広い雇用が必要だと思うので、地域農業の発展のためにも率先して頑張ってもらいたい」と期待を寄せる。

昨年は高収益作物であるイチゴとブドウ「シャインマスカット」の栽培を開始した。今後、収益は増える見込みだ。イチゴは昨年末に収穫が始まり、3月からは観光農園として稼働する。

「6次産業化にも取り組み、生産物の収益性を上げていきたい」と山本組合長。菜種油に加えてイチゴジャムの試作も始まり、1次生産物の付加価値を上げるなど、法人の未来を見据える。

イチゴの収穫作業を進めるイチゴ班長の前嶋裕佑さん(21)

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