農家支える「地域商社まるごと津和野」
津和野町は株式会社FoundingBase(ファウンディングベース)と連携し、2019年4月に地域商社を設立。都市部でのイベント開催や全国へ特産品を宅配するサービスを始めた。この取り組みが消費者や生産者から好評で、販路を広げる一助となり、今後の効果的な地域活性につながるか期待されている。
県の西端にある同町は豊かな自然に恵まれ、ワサビやクリ、サトイモなどは市場で高い評価を得ている。一方で農業者の後継者不足やそれに伴う農産物の販売力低下などの課題がある。
そんな状況を打破しようと、同町は首都圏への販路拡大を目指して、町の地域おこし協力隊などをまとめるファウンディングベースを運営会社とした「地域商社まるごと津和野」を設立した。同社は東京都文京区の津和野町東京事務所に拠点を構え、都市部で町のPRイベントやマルシェを開催するほか、オンラインショップ「まるごと津和野ストア」を開設し、「島根わさび」や「つわの栗」など、町内で収穫した野菜の詰め合わせや特産品の宅配サービスを展開する。
同ストアで農家から野菜などを仕入れ、購入者へ発送する上田裕貴さん(27)は「もっと津和野に興味をもってもらいたい」と話す。2018年に大阪府からIターンで同町に移住し、地域おこし協力隊員として地産地消活動に取り組む。
「当初はなじみも薄く出品する生産者は少なかった」と上田さん。しかし、コロナ禍で滞っていた農産物がオンラインショップでさばけたことで出品者は増えていった。今では約30戸が地元特産品を提供し、注文は多い月で約100件あるという。
同ストアにリンゴやゴボウなどを出品する宮藤敏典さん(59)は「出荷する選択肢が増え、手がけた野菜が全国に届くと思うと励みになる」と話す。
町農林課の長嶺将志副主任主事(29)は「まるごと津和野ストアは、コロナ禍でのピンチをチャンスに変えている」と期待を寄せる。
今後の目標として出品数の拡大やほかの都市でマルシェのイベント開催を掲げる上田さん。「農家と都市部の橋渡しとして津和野のおいしい野菜や特産品を届けたい。そして津和野に来たいと思ってほしい」と意欲的に話す。