産地の維持へ集団加入
出雲市 矢野 恵司さん
「2018年2月の大雪でブドウハウスが倒壊しました」と話すのは、出雲市の「斐川町ぶどう生産組合」で組合長を務める矢野恵司さん(58)。
「まさか」という思いだった。短時間で降り積もった雪の重みで同組合のブドウハウス12棟が全半壊。この被害を受け、生産者と関係機関が連携した農業災害復旧支援事業によるハウスの再建が始まった。しかし、高齢などを理由に再建を断念する生産者があり、復旧面積は約半分にとどまる。矢野さんは「被災から2年経過したが、完全復旧には至りません。ブドウ園地の再生には時間がかかります」と話す。
矢野さん自身もハウス1棟が全壊し再建した一人だ。支援事業にあわせ、再建の手助けになったのは園芸施設共済だった。以前から加入してはいたが、その重要性を改めて認識したという。しかし、被害を受けた生産者の中には共済未加入者もいた。そこで、より多くの人に加入してもらおうと同組合とNOSAI島根が協定を結び、掛金の割引を行う集団加入を選択。共済加入率の向上につながった。
ハウス強靭化推進
共済による補償だけではなく、同程度の自然災害に耐えられるハウスの設計も重要だ。矢野さんは「元のハウスは主骨ピッチが3mの造りでしたが、再建したハウスはすべて2mへ変更し、谷パイプも32㎜から38㎜へ変更。強靭化を図りました」と話す。
同組合では若手の新規就農者が増えたものの、高齢化が進み生産量は減少傾向にある。早期成園化への園地管理、栽培技術の向上、若手生産者の経営力向上など課題は山積みだ。
そこで、本年度はリースハウス建設も視野に入れた[斐川ぶどう活性化プラン再検討委員会]を設立する予定。産地維持とさらなる発展が狙いだ。
矢野さんは「例年6月上旬にデラウェアの出荷がピークを迎え、7月中旬から巨峰、シャインマスカットの出荷が10月ごろまで続く。新型コロナウイルス感染症の影響で先行きは不透明だが、品質の良いブドウを皆さんのもとへ届けたい」と前を向く。