伝統野菜黒田セリ

松江市 野津 宏三さん

松江市黒田町の野津宏三さん(85)は、地区で江戸時代から続く伝統野菜「黒田セリ」を20㌃で栽培する傍ら、次世代につなぐため栽培農家の育成に力を注いでいる。黒田セリは、かつて沼地だった地区で群生していた野生のセリを改良したもの。冬場の野菜として栽培され、「セリ田」での収穫風景は冬の風物詩だった。「昔、冬場の青い野菜といえばセリだった。香りが良く、おでんや鍋の食材としてもよく使われ、市外や県外へ出荷していた」と野津さん。 

最盛期の昭和40年代頃には、市内で約30戸のセリ農家があったが、最近では市街化や高齢化、冬場に水を張ったセリ田での収穫作業の辛さなどから、出荷農家は5戸まで減少していた。「歴史があり先人から受け継がれてきた黒田セリを、自分たちの代で絶やしてはいけない」。野津さんが始めたのが、新たなセリ農家を育てることだった。ハウス農家の高橋裕介さん(38)は、野津さんから声を掛けられたうちの一人。「冬場のホウレンソウや菜っ葉は競合が多いが、それに比べて黒田セリは安定している」と評価する。

高橋さんは栽培を始めて今年で4年目。「セリ作りは難しい面もあるが、市場やスーパーからの引き合いが強い」と手ごたえを感じている。今では、野津さんの指導を受けた3戸の農家が栽培に精を出す。「新たに引き継いでくれる人たちに、黒田セリを伝統野菜として有名にしてもらいたい」と野津さんは期待する。

「セリ田は水管理が難しく、こまめに見て調節しなければならない」と野津さん