観光ミカン園 異業種とも連携

安来市 佐伯 勝美さん

「人と違うものを作りたい」と山陰地方では珍しい観光ミカン園を経営する安来市黒井田町の佐伯勝美さん(67)は、独自の土づくりと水分管理の徹底で高品質なミカンを栽培する一方、異業種と提携した料理の提案や加工品などの6次産業化に力を入れている。ミカン栽培を普及させるため、規模拡大と栽培農家の育成に向け佐伯さんは奮闘を続けている。

安来市はナシやブドウが特産品として有名だが、人の後追いはしたくないと考えていた佐伯さんは、中海に面した土地の平均気温が16度以上あることに着目。この場所であれば、日照の少ない山陰地方でもミカン栽培が可能なのではと考えた。そこで基礎的な技術を習得するため県内外の農業試験場に問い合わせたり、ミカン栽培が盛んな四国の生産現場を視察したりと、独学で栽培方法を学んだ。

特に力を入れるのは土づくりだ。落ち葉堆肥はトラック20台分を投入。カキ殻を粉末状にして数カ月かけてすき込むことで微生物の働きを促進して、ミカンが育ちやすい環境を実現している。また水分量を適切に管理するため、木の根元はマルチシートで被覆、地下80㌢には防根シートを入れて根域制限栽培をすることで高糖度・高品質のミカンが収穫できる。生産規模は当初の4品種・170本(16㌃)から、5品種・420本(36㌃)まで拡大。初年度700人だった入園者数は、昨年は3800人と順調に増えている。

佐伯さんの次の挑戦はミカンを使った加工品だ。市内でミカン狩りから食事まで楽しめるよう、地元のレストランやケーキ店に商品開発を依頼。 昨年、肉料理とスイーツを考案した同市のレストラン「罵伊絵留(ばいえる)」のオーナーシェフ・頼田孝和さん(40)は「フランス料理ではかんきつ類を使うので、地元産のミカンが使えるのは面白いと思いました。お客様にも好評です」と話す。

2018年にはジュースの販売を始め、今年からは贈答用の木箱に入れた販売も検討する。その他、ミカンの花から採取した蜂蜜の販売や、ミカンの皮を使った石けんの製品化などアイディアは広がる。

将来は研修生を受け入れて、後進の育成を目指す佐伯さんは「収穫できるまで最低5年はかかるので、行政と一体となった受け入れが必要」と話す。若い人たちが「農業に挑戦したい」と思える、魅力ある農業の実現を目指して佐伯さんは突き進む。

「ミカンで地域農業の魅力を発信していきたい」と佐伯さんと妻の弥恵さん

ジュースと蜂蜜は木箱に入れて高級感を演出