教員から養蜂家へ 完熟蜂蜜を販売

浜田市 中山正さん

「生物の教科書に出ていたハチの8の字ダンスを生徒に見せたくて、ミツバチを飼い始めました」と話すのは、浜田市の中山農園株式会社代表取締役の中山正さん(60)。同社は浜田市と江津市に養蜂場を持ち、ミツバチが自然に熟成させた天然蜂蜜を採蜜する。東京を拠点に販路を開拓し、高品質な島根産蜂蜜としてバイヤーから一目置かれている。

同社では、糖度80度以上となった完熟蜂蜜の採蜜を目標とし、一般的な天然蜂蜜の認定基準である78度を超える甘さが特徴だ。熟成した蜂蜜を採取するため、人の手を加えることなく、ミツバチが巣穴に蜜を集め蓋(ふた)でふさぐのをじっくり待つ。その後、すぐに採取することなく巣箱の中で自然濃縮させることで、より甘い完熟の蜂蜜となる。「ミツバチの羽の音を聴いて健康状態を感じること、ミツバチから蜂蜜をいただいている姿勢を持つことが重要」と中山さん。ミツバチに触れた感覚を大切にするために、手袋をつけず、ハチを傷つけないよう慎重に作業を行う。

「作業していると自然の中で働けているな、幸せだなと感じます」と中山代表

養蜂家になる前は、高校で生物の教師をしていた中山さん。「蜂蜜を採ってみたい」と養蜂に興味を持ったことから、1995年から市内の養蜂農家のもとで飼育技術を学び始めた。2010年に教員を退職し、本格的に養蜂業を始めた。ミツバチを飼うには周囲との関係性が重要と考えて、巣箱を置く土地の地権者や販路開拓先などの人脈作りと信頼関係の構築に力を注いできた。

養蜂業を始めた当初、大変だと感じたのは販路の確保だった。県内では販売先が限られるため、目をつけたのが東京。日本橋にある県のアンテナショップを拠点に販売を始め、自身も店頭で売り込んだ。その縁から商品の卸し先が徐々に広がり、バイヤーからも注目され、百貨店など都内数カ所で販売するようになった。定期的に蜂蜜を購入するという浜田市の横田貴史さん(55)は「透明度が高くきれい。糖度は高いが甘すぎず、とても食べやすい」と評価する。

巣箱から採取した巣蜜

自然環境の変化などで世界的にミツバチが死滅する事例が確認される中で、中山さんは収入の減少を補償する収入保険に加入した。「リスクに備えることで安心して養蜂ができます。好きな養蜂ができて幸せだという思いを、蜂蜜に込めて消費者へ届けていきたい」と情熱を傾ける。