畜産と養殖を両立

知夫村 古谷 光教さん

隠岐諸島の最南端に位置する人口約600人の知夫里島(知夫村)で、主産業である畜産業と漁業の両方を手掛ける古谷光教さん(44)。和牛繁殖農家としての顔を持つ一方で、岩ガキの養殖業者として漁業にも携わり、陸と海の仕事を両立させている。

古谷さんの前職は公務員。23年間務めた知夫村役場を2017年に退職して、未経験ながら畜産の世界に飛び込んだ。「牛が身近にいる環境なので、経営計画が立てやすかった」と就農のきっかけを話す。

まず繁殖牛5頭を購入した古谷さんは同村に24戸ある畜産農家を回り、それぞれの農家のやり方を自分に合うよう取り入れながら畜産技術の習得に努めた。最初は約500㎏もある牛が怖かったが、現在は30頭を飼育。今後も規模を徐々に拡大させ50頭を当面の目標としている。家畜の診療を行う野田浩正獣医師は「牛を飼うことで地域おこしになればという思いで一生懸命取り組んでいる。村の畜産をけん引する存在になってほしい」と期待する。

「一頭一頭の顔と性格がようやくわかってきました」と古谷さん

村内には島全体に4カ所の公共放牧場があり、通年放牧を行う。ほとんどの農家が放牧場を利用し、管理の省力化と牛の体力強化を図る。放牧では農家間で牛の状態などの情報を共有することが必然となり、そのことが島全体の畜産振興につながっている。「常に牛を観察することが基本、防げることは防がなければ」と古谷さんは朝晩に放牧場に行き、牛の健康チェックを欠かさない。特に事故が多い分娩前後は、牛舎に連れて帰り飼育する。2年経つが、死亡事故はないという。

港、牛舎、自宅が近くにあるため動きやすく、日中は近くの姫ノ浦港で家業の岩ガキ養殖に従事する。今年4月には週末限定のカキ小屋をオープンし、5月の連休には多くの観光客が訪れた。岩ガキの水揚げは3~6月だが、特殊凍結システムを活用して10月ごろまで鮮度の高いカキを提供できるよう工夫している。

古谷さんは「時間は不規則ですがマイペースで仕事ができるので、気持ちにゆとりができました」と異業種の畜産業と養殖業を組み合わせ、自分流のスタイルで仕事に向き合っている。

知夫村の放牧場

 

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